僕の好きな言葉

東洋鍼灸専門学校・一年生在学時の学友誌『道友』に掲載された拙文

 

僕には好きな言葉が4つある。今日はそれを披露しながら、つれづれなるままに語ってみたいと思う。

まずは、『和して同ぜず』である。人間社会、どこにおいても、協調性はもちろん大切である。でもそれは自分を押し殺して周りに従うことではない。特に今までの日本の企業風土においては、逆に『同して和せず』が闊歩していたのではないだろうか。一見仲良しクラブのごとく協調しているようで、実は周りの状況を本当に理解できてないと共に、せっかくの自分らしさを埋没させてしまっているのだ。

これからの時代、これは社会にとっても損失だし、とにかく面白くない。西洋流に言えば、個性を大切にということだろうが、礼儀をわきまえ、お互いの人間性を尊重しつつも、それぞれの大切な個性が活発にぶつかり合っていることが素晴らしいのだと思う。

さて、次は『柔よく剛を制す』だ。押してダメなら引いてみな、ができずに押しの一手でどうにも埒が明かずに、汗をかいては閉口することは、別にドアのノブに限らずとも、日常、結構、経験するところである。恋愛上の駆け引きに関しては、話は別として、とても好きな言葉だ。英語流に言えば、フレキシブル、いわゆる柔らか頭に通じるのかも知れない。

これに関連しては、小さい頃よく聞いたイソップ物語の北風と太陽の話がその神髄を見事に表現していると思う。力任せに旅人の服を脱がせようと北風は頑張るが、旅人は益々服をしっかり押さえてうまくいかない。でも太陽がぽかぽかと暖かく照らし出すと、旅人はにっこり微笑みながら、自ら服を脱ぐのである。

相手の立場を考えない、自分だけが有利な契約は結局失敗に終わると、大げさに話を展開しなくても、これは人間関係をベースにした人生に対して、誠に含蓄深い意味を提供していると感心してしまうのである。

お次は『人生、皆これ、我が師なり』である。漢文中の有名な話で、一頃書籍のタイトルにもなった、万事塞翁が馬、にも対応していると思うが、とにかく、何が起こっても、いい経験をした、これは結局自分のためになるのだ、と捉えることは、自分のような腹の座っていない人間にとっては、とても大切な考え方だとつくづく思ってしまう。失敗は成功の元、いや失敗というより、輝かしい成功への一つのプロセスなのだと理解するのである。

要は、昨今花盛りで、古典的な、マーフィーの法則にも述べられている、ポジティブ思考の重要性を言って
いるのであろう。そして、それは結局、自分を信じることなのだ。

さてさて、いよいよフィナーレの言葉となったが、それは『一期一会』である。これは、四つの中でも一番と言っていいくらい好きな言葉だ。

ちょっと前、医道の日本(鍼灸やマッサージ治療に関する研究学会誌)を読んでいて初めて知ったことだが、もともとは茶道から来た言葉のようである。茶室でお客さんをもてなすときに、一生に一度、この今しか、もう会えないと言うくらいの気持ちで、最高のおもてなしをしてあげる心の重要性を説いているのだそうだ。

袖振り合うも多生の縁、ではないが、人との出会いは誠に不思議であり、かついいもんである。昔、田舎のある飲み屋の壁に掛け軸があって、そこに「出会いの不思議さに手を合わせよう」と書かれてあり、出会いの妙味を見事に表していると感動したのを今でも覚えている。

人は一生のうち、いったい何人の人と出会えるのであろうか? ちょっと考えてみても、例えば街で道を尋ねた人を含めても、そんなにたくさんの数にはならないはずである。そのように考えると、会話をちょっとでも交わせた人や、それこそ、袖が振れ合った人も、人生において、とても貴重で素晴らしい縁なのではないだろうか。それこそ、その不思議さに感謝しても、いいのかも知れない。

この言葉は、僕流に解釈させてもらえば、チャンスということだと思う。よく、あの人は運がよかったのだ
と言う。自分はチャンスに恵まれていないと嘆く人がいる。でも、僕に言わせれば、運も実力のうち、というより、それぞれの人の近くにきているチャンスをしっかり掴むか、意識の有無に係わらずそのままにして、逃がしてしまうかの差ではないのかと感じる。

一生のパートナーになるかも知れない人と知り合いになるのも、全くの他人として通り過ぎてしまうのも、ちょっとしたチャンスをしっかり掴むかどうかであり、そこには自ずと勇気が必要になる。でも、その勇気を出し渋ってはいけないと思う。自分で言うのもおかしいが、小心者の自分ではあるが、意外なほど行動が大胆なのは、いわゆる一期一会の素晴らしさ、そして、はかなさが自分を駆りたてているような気がする。

何か取り留めのない話になりそうなので、この辺で一応まとめてみようかと思う。そう、上記4つの言葉も、共通項がありそうである。要は、自分を信じること、そして、勇気のスパイスを毎日の生活の中に振りかけることに集約されそうだ。

ところで、今日の午後はちょっとスパイスを強くしないといけないかも知れない。

え、欠点だらけのこの自分を信じる勇気の? 

ん、そうかも知れないけど、刺激的なおいしい人生の料理にするために、とでも言っておこう。

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このページは、greekが2005年5月18日 20:37に書いたブログ記事です。

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